指導が行き届かず申し訳ありません…<言語分析編>

指導が行き届かず申し訳ありません…

誰が何に対して謝っているのでしょうか?

「指導」
「行き届く」

の理解がポイントですね。

語義

指導とは、

目標に向かって教えみちびくこと。(広辞苑第七版)
ある意図された方向に教え導くこと。(大辞林第四版)

とあります。
行き届くとは、

あまねくゆきわたる。すみずみまで気が付く。(広辞苑第七版)
すみずみまでよく注意がゆきわたる。(大辞林第四版)

ということは、

指導が行き届かず申し訳ありません。=皆を正しい目的に教え導くことができずにすみません。

という意味になります。

適用場面

皆を正しい目的に教え導くことができなかったことを謝っているわけですから、正しい方向へ教え導く責任を負っている者が、教え導かれる者の不正・違法行為を防ぐことができなかったことを謝る場面で「指導が行き届かず申し訳ありません。」と発話するのです。

コーチが部員へ暴行をした場合

この場合に、コーチが「指導が行き届かず申し訳ありません…」と謝ったという状況を想定すると、字義によれば正しい者はコーチで、不正・違法行為をしたのが指導される者(たとえば部員)ということになります。
そうしますと、暴行をするコーチが善で、部員が悪ということになりますが、もし暴行をするコーチが善だとすると、部員への暴行が足りずに申し訳ありません、と謝っていることになります。今の時代にそれはないですが、しかしコーチがそういう表現をしたのだとすると、部員を教え導く正しい方法の一つとして暴行を考えているということが明らかになります。

考えていないことを人は言えない

人は言語を用いて思考します。日本人であれば日本語を用いて思考します。その思考を外に表現するにも言語(日本語)ですから、表現された言語は思考に基づいてなされています。
そうであれば、思考していないことを人は表現することはできません。
どういう表現をしているのか、は人が何をどう考えているかを表しているのですから表現には気を付けなければなりませんね。

---終---

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