(雨天状況で)「良い天気ですよね」<言語分析編>

雨が降っているけど…

外は雨が降っている状況で、次のような発言があったらどう思いますか?

良い天気ですよね

こういう発言を聞くと、多くの方は、「?」になるかと思います。
晴天の場合に「良い天気ですよね」と発言するのが通常だからです。
雨天と晴天のどちらの場合にも「良い天気ですよね」という発言がなされるわけですが、矛盾なのでしょうか?

「良い」の意味は?

「大辞林 第四版」で、

「よい」=望ましい状態を広くいう語

と説明されています。

「望ましい」=そうあってほしい。願わしい。

で、

「望ましい」=動詞「望む」の形容詞化

とされていて、

「望む」=自分自身のことについていう。

というが基本です。
ということは、「望ましい状態」とは、そうあってほしいと自分が願う状態のこと、つまり話者の主観が基準となりますので、「よい」も話者の主観が基準となる単語ということになります。

…ですよね(半疑問)

(雨天状況で)「良い天気ですよね」という半疑問形を用いているのは、雨が降っているのが良い天気だよね、と相手に確認をする発言です。
確認をされる方と確認する方とが共通認識を有していないと通じない発言です。
ここで、「良い」は、具体的に、「目的にかなっている」という意味がありますから、外は雨が降っている状況で「良い天気ですよね」という発言は、話者にとって雨天であることが目的にかなっているわけです。そのことを相手に確認するわけですから、雨天であることが目的にかなっている者同士でしか雨天の状況で「良い天気ですよね」という発言は通じないことになります。

コインランドリーの店主

たとえば、コインランドリー店主同士の話であれば(雨天状況で)「良い天気ですよね」という発言はお互い理解することができるはずです。
雨天であれば洗濯物をコインランドリーに持ち込む利用者が多くなりますから店の売上が上がるわけで、売上向上という目的を共有しているコインランドリー店主同士では(雨天状況で)「良い天気ですよね」という発言を実感を持ってお互いに理解し、共感することができます。

言葉の意味

言葉の意味は辞典を調べればわかりますが、言葉が現に使用されている文脈や言葉を話す話者の主観で言葉の意味は変わってきます。

翻訳でも

翻訳でも多義語でどの意味を用いるかは文脈と文脈からわかる話者の主観が基準となります。決して辞書的な意味を知っていれば翻訳が可能というわけではないところが翻訳の難しさです。

---終---

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