コモン・ローとエクイティ<リーガル翻訳編>lien(リーエン)

リーガル翻訳リーエン

リーガル翻訳とリーエン

リーガル翻訳とリーエン
英文契約書で登場する [lien](リーエン)
辞書では、

  • 留置権
  • 先取特権
  • 担保物権

とありますが、それぞれ違います。
どれを使えば良いのでしょうか?

ECS リーガル翻訳

先取特権

先取特権は、たとえば、
従業員の給料債権に認められる法定担保物権です。
従業員であれば、会社が倒産した場合でも、会社に対する他の債権者に先立って、自分の給料を会社に請求する優先権が認められています。

留置権

留置権は、たとえば、
自動車修理工場が、修理した自動車にかかった修理代金を修理依頼者から回収する際に、修理代金が支払われるまで修理した自動車を返さなくて良い(留置することができる)権利です。
この留置権により、修理工場は、修理代金を回収することが容易になります。
ただし、先取特権とは違って、留置権の場合、上の例では修理した自動車を修理工場が占有していることが必要です。

2つのリーエン (lien)

リーエン (lien) には、実は二つの法制度の流れがあります。
一つは、コモン・ロー (Common-Law) で、
もう一つは、エクイティ (Equity) です。

ここで、コモン・ローとは、イギリスに古くから存在した法体系で、
対して、エクイティとはコモン・ローを補充する形で発展した法体系です。
この二つの法体系のもとで、それぞれのリーエンがあります。

コモン・ロー上のリーエンは、日本法でいうところの留置権にほぼ相当し、
対して、エクイティ上のリーエンは、日本法でいうところの先取特権にほぼ相当します。

ECS リーガル翻訳

リーガル翻訳とリーエンの訳

では、リーエン (lien) をどう訳すればいいのでしょうか?
文脈上、コモン・ローのリーエン(留置権)と訳するのか、エクイティのリーエン(先取特権)と訳するのか、それとも、もっと大きく担保物権と訳するのかを判断する必要が出てきます。

ここでも、やはり、日本法(民法)の理解が必要になります。
法定担保物権である「先取特権」と「留置権」
そして、
約定担保物権である「質権」と「抵当権」
の理解がなければ、リーエン (lien) の翻訳は困難かと思います。

前回の何がどう違うのか?<リーガル翻訳編>責任・債務もご一読いただけると幸いです。

---シリーズ続---

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    1 件のコメント

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