英文契約書作成時の注意点(準拠法の指定)

英字新聞

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見逃しがちな事項

英文契約を結ぶ場合、
(1)具体的な内容をどうするか?
(2)英語でどう表現するか?
ということに注意を払うことは当然ですし、英文契約を締結したことがある方なら既にご存じだと思います。
しかし、準拠法の指定については以外に疎かになっているかもしれません。

準拠法とは?

“準拠法”とは、国際的私法法律関係(渉外関係)において、国際私法という法律によって指定され、適用される法のことをいいます。
アメリカ人と日本人との自動車売買契約を例に取ると、当事者に適用される法はアメリカの法なのか?それとも日本の法なのか?ということです。
さらに言うと、アメリカは「合衆国」ですから、州毎に法律が異なります。
ですので、どの州の法律を適用するのか?ということを特定しなければなりません。

準拠法の指定は重要なのか?

準拠法をどうするかで結論が変わるのでしょうか?

具体例

たとえば、19歳のS国人Aが日本人(25歳)甲の所有する自動車を買うために甲と売買契約を締結しました。
日本では成人年齢は20歳以上です(民法4条)。
S国法での成人年齢は18歳とします。

説明

この例で説明します。
Aが自分は日本法によれば未成年者であるとして、自動車売買契約を取り消すと主張した場合、どうなるでしょうか?
日本法が準拠法であれば、Aの親(法定代理人)の同意がないならば、Aの取り消しが認められます(民法5条2項)。
しかし、S国法が準拠法であれば、AはS国法によれば成年ですから上の契約を取り消すことはできません。
準拠法を日本法と指定していれば甲はAの契約取り消しを受け入れるしかありませんが、準拠法をS国法と指定していればAは契約を取り消すことはできません。

重要性

準拠法をどう指定するかは取り消し可能性に関ります。
つまりは、契約を取り消されると甲は自動車の売買代金をもらえないことになるのです。
準拠法の指定次第で、代金を受け取れるか否かが変わってくるわけですからその重要性をお分かりいただけたと思います。
もし、甲が代金を受け取った後で、Aが取り消したとすると、さらにやっかいです。
甲はその代金を使ってしまっていたとしても、Aに返金しなければなりませんから。

まとめ

準拠法の指定次第で

  1. 代金を受け取ることが出来るのか否か?
  2. 返金の必要性があるのか否か?

 
が変わってくるので、準拠法の指定は重要だということでした。

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