「水」は数えられないのでしょうか?<英文法編>可算・不可算名詞

「水」は数えられない?

英語で水は[water]です。
通常は、[water]は数えられない名詞(不可算名詞)だ、と習うと思います。
ですから、
[waters]
は間違いだと習ったかと思います。

不可算名詞とは?

ここで、正確には、

不可算名詞とは、数えられないものとしての扱いを受ける名詞

のことです。
逆に、「数えられるものとしての扱いを受けるものを表す名詞を可算名詞」(安井稔「英文法総覧 改訂版」(開拓社、1996年)62頁)と言います(赤字は真栄里)。
ここで注意していただきたいのは赤字の文字「扱いを受ける」です。
人間の外にある世界(対象)に数えられるのか数えられないのかという実体があるわけではないことを意味しています。
あくまでも、数えられるのか、数えられないのかの判断基準は、人間が対象物を数えられると扱うのか、数えられないと扱うのかという人間の認識にあるのです。
世界(対象)をどう認識しているのかという認識枠組みに基づき、可算名詞か不可算名詞かが区別されているのです。

燃えるゴミ?燃やすゴミ?

たとえて言うのなら、

えるゴミ
やすゴミ

の違いと同じです。
ゴミ自体の性質として燃えるのかどうかを基準にしているのが「燃えるゴミ」です。人間の認識は関係ありません。紙がその典型です(紙は燃えないと認識している人がいたとしても、紙は容易に燃える性質を有していますので「燃えるゴミ」になります)。
ゴミ自体の性質として燃えるのかどうかではなく、燃やすと分類するかどうかを基準にしているのが「燃やすゴミ」です。プラスティックは「燃えるゴミ」には該当しないこともあるかと思いますが、「燃やすゴミ」には含まれることが多いと思います。
可算名詞・不可算名詞の区別基準もこれと同じことです。

数えられる「水」

[water]も数えられる名詞として扱われることがあります。
たとえば、

Japanese waters(日本海域)
British waters(英国海域)
Chinese waters(中国海域)

などがそうです。
宇宙から地球を見た場合、海はすべて繋がっていて区別はつきません。
しかし、人間の決まり事として国境があり、領海というものがあります。実際の海を見てもここからは日本の領海で、そこからは中国の領海だ、ということはわかりませんが、人間の認識としては、領海というはっきりとした区別があるのです。
日本固有の領海、英国固有の領海、中国固有の領海というように人間の認識においては他の領海とはっきり区別され、個性を有しているので、「水」であっても可算名詞となっているのです(もっとも、正確には海域を意味するwatersの”s“は文法的には、「海・川・領海など水域を示す強意複数」(ジーニアス英和大辞典)とされていますが、複数形であることは単数形があること、つまり単複の別を前提としますから強意複数には可算名詞扱いの発想があります)。
人間が個性を認めている場合は可算名詞と扱われる、と考えておくとわかりやすいと思います。

翻訳では

英日翻訳では、原文の名詞が可算名詞なのか不可算名詞なのかで当然訳も変わってきますので、その違いを理解しておくことは重要です。
[water]には可算名詞がないと間違った知識を有していると、[Japanese waters]を「日本の水」と訳することになり誤訳してしまうことになります。
可算名詞か不可算名詞かは中学1年で習う文法事項ですが、その区別基準が人間の認識枠組みにあることは意外に知られていないことだと思いますので要注意です。
中学1年で習うには難しすぎるとも言えます。

翻訳者を目指す方へ

翻訳者を目指す方は、こうした基本的な文法事項を疎かにせず、しっかりと基礎を学び(基礎であればあるほど難しいものなのです。安易に考えてはいけません)、英語学習を通して、英語による世界の認識の仕方を身につけていくことが大切です。

---終---

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