前回のブログ
権利と権限の使い分け<リーガル翻訳編>権利・権原
も参照していただければと思います。
責任と債務
責任という語は、多義的です。
ここでは、責任と債務との対比で両用語の違いを押さえておきたいと思います。
たとえば、
A→B
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AがBに家を売却した場合
買主Bは売主Aに対して、代金を払わなければなりません。
これを、BはAに対して、代金支払債務を負っている、といいます。
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もし、
BがAに代金を支払わない場合は、Bは自己の財産でもってAに代金を支払わなければなりません。
たとえば、Bが所有する自動車を売って資金を作って売買代金を支払うなど。
これを、Bは代金支払の責任を負っている、といいます。
債務あれば責任ありが通常
上のように、代金支払債務を負っているBは、手元に現金がない場合は、Bが所有する自動車を売ってでも資金を作ってAに代金を支払う責任を負っていますから、
債務を負う者は、責任も負うのが通常です。
物上保証人
しかし、
そこから、債務と責任を同じと考えるのは間違いです。
物上保証人という人がいます。
これは、たとえば、自分の不動産に抵当権を設定する人のことです。
甲が乙に1,000万円貸す際に、丙が自分所有の家屋に抵当権を設定する
場合です。
この場合、もし、乙が甲に1,000万円を返せなければ、丙は自分の家屋が競売にかけれて現金化させられ、その現金から甲に1,000万円を返す、ということになります。
丙は担保責任を負っているからです。
ですが、
丙は貸金返還債務は負っていません。
貸金返還債務を負っているのは、甲と消費貸借契約を締結した乙だからです。
丙は甲と消費貸借契約を締結していませんので、丙は貸金返還債務を負っていないのです。
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この物上保証人の例からもわかるように、責任と債務は違いますので、法律関係文書で使用する際は注意が必要です。
英語では?
責任=liability
債務=obligation
となります。
---シリーズ続---
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