前回のブログ
責任の英訳は?<リーガル翻訳編>責任
も参照していただければと思います。
権利と権原
似ているので区別をしておかないといけない用語です。
権利を持つ者は、
相手に対して、作為(〜せよ)や不作為(するな)を求めることができます。
権原(*)は、
ある行為をすることを正当とする法律上の原因をいいます。
(*)権原の読み方は「けんげん」ですが、権限と読みが同じなので、権限と区別するために「けんばら」と読むことがあります。
使用場面
権利
賃貸人Aが自己の一軒家甲を賃借人Bに貸すという賃貸借契約を締結した場合に、
期日になってもAがBに甲を引き渡さない場合、賃借人Bは賃貸人Aに対して、甲を自分に引き渡せ(作為)と要求することができます。
この要求が賃借人Bの権利です。
権原
賃借人Bが賃貸借契約で定めた期間中に、その契約が解除されたり合意解除をしたといった事情がないにもかかわらず、賃貸人Aから甲はAの所有物だから返せ、と言われた場合、Bは自分に賃借権があるから返さないと言うことができます。
この時のBの賃借権が権原です。
Bに賃借権があることで、契約の期間中、BはA所有の甲を利用することが法的に正当化されるためBはA所有の甲をAに返す必要がないのです。
権利の文脈?権限の文脈?
上の権利と権限の使用場面を踏まえ、
権利という用語を使う文脈なのか?
権原という用語を使う文脈なのか?
を判断する必要があります。
賃借人Bが賃貸人Aに雨漏りする屋根を修理してくれ、という文脈では、雨漏りする屋根を修理してくれと要求する権利が賃借権に含まれているので権利という用語を用います。
何かを要求する文脈ではなく、利用することが法的に正当化されるという文脈では権原という用語を用います。
権利は攻める(攻撃する)場面、権原は守る(防御する)場面、というイメージです。
英語では?
権利=right
権原=title
です。
titleは元々、物体に刻まれた、その物体の名称を示す銘板のことをいいます。
(An inscription placed on ~ an object, giving its name ~.(OED))
つまり、物体の名称を示すものがtitleです。
権原というのも、上の例のように、BがA所有の一軒家甲を利用することが法的に正当化される状況に付けられた名称ですから、英語では、物体の名称を示すtitleが用いられているのだろうと思います。
---シリーズ続---
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