とても奥が深い”This”と”That”<言語分析編>

語らう会

もう何回開催しているのか不明ですが、7月18日(土)も午後8時から月一恒例の「語らう会」を開催しました。

今回のテーマ

今回、ホットなテーマとなったのは、とても基本的な単語の[This]と[That]です。
中1で一番初めに学習する単語ですね。

近くにある自分のカップを指して、
This is my cup.

少し離れたところにいる友達の犬を指して、
That is your dog.

というような感じです。

英英辞典によれば

Merriam-Webster’s Advanced LEARNER’S ENGLISH DICTIONARY

によれば、[this]は、

the person, thing, or idea that is present or near in place. time, or thought or that has just been mentioned.

とあります。
ポイントは、

ある者(物、考え)に場所的、時間的、思考的に近い距離感を表すのが[this]という単語の意味

になります。
中学校の英語の教科書には、

話し手から見て、比較的近くにあるものや人を指し示す時は、This is ~.(これは~です)と言う。

とあります(NEW TREASURE STAGE 1 21頁)。
日本では、物理的な近さ・距離感のみを表すかのような説明となっています。
ですが、英英辞典では、場所のような物理的な近さだけではなく、時間的な近さや思考的な近さも[this]で表すと説明されています。
思考的な近さ・距離感となると、物理的な距離感を超え、心理的な距離感も含まれてくるでしょう。
個人的な親しみ具合が強いと[this]という単語を用いると考えられます。

Is this John?かIs that John?か

そこから、アメリカ英語とイギリス英語で次のような表現の違いがみられるようです(Merriam-Webster’s Advanced LEARNER’S ENGLISH DICTIONARY)。

(US) Hello. Is this John?

(British) Hello. Is that John?

ジョン家に電話をかけて電話を取った方がジョンさんなのかを確認する際に、「ジョンさんですか?」と尋ねる表現です。

アメリカ英語では[this]
イギリス英語では[that]

となっています。
英語では、距離感をもって敬語を表しますから、距離が遠い場合の方が距離が近い場合よりも敬語となります。
ということは、Is that John?と[that]を用いているイギリス英語の方がアメリカ英語よりも敬語となっています。
アメリカ英語の表現はフレンドリーです。

省略形の有無

[that]を使用した文は、次のように表記されることがあります。

That’s your dog.

ですが、[This is my cup.]の省略形はありません。
まぁ、[this’s]と表記しても発音しにくいという理由もあるかもしれませんが、どうもそれだけではないのでは?
心理的な近さ、個人的な親しみ具合の強い対象を[this]で表すのであれば、認知言語学上、[this]で指し示される対象はその個人にとっては他の対象と明確に区別され際立つ存在としてとても強調される存在なのではないでしょうか?
[this]も[that]もともに“限定詞”(名詞が指し示す対象を限定し明確にします)ですが、[this]の方が[that]よりも対象を明確にする程度が強いといえます(語らう会のメンバーであるT先生、[that]とは違った[this]のこの特徴のご指摘ありがとうございます。)。
[Collins ENGLISH DICTIONARY 13TH EDITION]によれば、非公式な表現ではありますが、

often used in storytelling, an emphatic form of “a”, “the”: I saw “this” big brown bear.

と記載されています。ポイントは、[a],[the]の強調形式として[this]を使用するということです。
[that]は、[this]よりも心理的な距離感があり、個人的な親しみ具合が[this]よりも弱くなるため、強調の意味合いは少なくなっています。
[that]だけを強調する必要はないから[that’s]という短縮形があるのでしょう。
逆に[this]は強調形式ですから[is]との短縮形を認めると[this]が分かりにくくなります。ですから[this is]の省略形は用いられないのだと思います。

基本中の基本ですが…

[this]も[that]も基本中の基本の単語ですが、奥が深くとても勉強になった「語らう会」でした。

---終---

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