中学、高校レベルの英語力で翻訳者になれるのでしょうか?

英語力の高さってどれくらい必要なのでしょうか?

最近、安易に翻訳者になれると謳う学校が複数登場し、色々と問題になっています。
これらの学校に共通するのは、「高い英語力は必要ではない、中学・高校レベルの英語力があれば足りる」ということのようです。
これを聞いて、そんなレベルでも翻訳者になれるんだと思う方も多いのではないでしょうか?

中・高レベルの英語力は易しいのでしょうか?

私が念頭におく英語力とは、「英文法」です。
そうです、多くの方が敬遠しがちなあの「英文法」です。

個人的には文法レベルは中・高レベルで十分だと思います。
ですが、私はその中学・高校レベルの英文法を身につけるのが難しいというふうに思っています。
どれだけ一文が長くても文の骨(構造)を見極める文法力がなければ翻訳者になることはまず無理です。
中学・高校レベルの文法知識を単に知っているだけでなく、初見の英文であっても、中学・高校レベルの文法力を駆使して文を読み解く力が翻訳者の必須条件なのです(十分条件は別にあります)。
初見の英文を、中学・高校レベルの文法力を駆使して読み解くのはすぐにできることではありません。使いこなせるようになるにはかなりの鍛錬が必要になります。
以前取り上げたことがありますが、例えば次の単純な英文をご覧ください。

I is ninth.

この意味はなんでしょうか?
私は9番目です。では間違いです。その意味であれば、

I am ninth.

となるからです。
「私」という意味での”I”であるならばbe動詞は”am”と決まっています。
ですが、上の例文は、[ I “is” ninth. ]ですからこの”I”は「私」という意味の”I”ではないのです。
極めて基本的な英文法で、しかも短い文ですが、使える英文法の知識を持っていないとこのような短い文でさえ正確な意味がわからないのです。
後から説明されて、「なるほど!」では、翻訳者失格です。プロの翻訳者になるためには、初見の英文を見て、自分で正確な意味を理解しないといけません。そのためには、英文法の知識を使いこなせるレベルになっていないとダメです。知っている単語をつなげて意味のわかる日本語にする、というのは翻訳ではありません。これは英語が苦手な学生がよくすることです。文法がよくわかっていないので、知っている単語を意味の通る日本語に適当に置き換えているだけです。英語の勉強にすらなっていません。英文を用いて日本語を勉強している…。

翻訳者に必要な能力とは?

必要条件として、文法力です。これがないと話になりません。語彙力があるだけでは翻訳は無理です。もちろん、語彙力がない方が翻訳をすることはできませんから、その意味で文法力と語彙力は両輪なのですが、「英語の勉強=単語を覚えること」という認識をお持ちの方が多い中では、文法力を強調すべきかと個人的には思っています。
逆に言えば、英語の文法は嫌いだ、文法の勉強は避けて楽して翻訳を仕事にしたいという方は、出発点でズレていますからそう思っている時点で、翻訳者には向いていないと思います。

安易な煽り文句に踊らされない

翻訳に必要な本質的なこと(英文法を駆使するなど)というのは、それを獲得するのにどうしても時間がかかってしまいます。どのような業界でも数ヶ月ですぐに一人前として仕事ができるということはありません。
例えば、プロアスリートは、小さい頃から何年も何年も基礎を地道に繰り返しながら練習に励んだからこそプロとして活躍することができるのです。そういった地道な練習あってこそ、その道のプロとして活躍することができるわけですから、その地道な努力を払うことを苦と思う方はその分野を仕事にすることは向いていないと思います。
真剣に翻訳者になりたい方は、満遍なく情報を収集されてご検討されてください。
安易な煽り文句の宣伝には惑わされないことを願っております。

---終---

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