わかりやすさと正確性が二律背反<リーガル翻訳編>特徴

リーガル翻訳 論理

「リーガル翻訳と論理」(今回)
前回の記事はこちらです。
何がどう違うのか?<リーガル翻訳編>責任・債務
ご参照いただけると幸いです。

リーガル翻訳とは?

リーガル (legal) 翻訳というのは、法律の翻訳ということです。
広く法律に関する文書である契約書などを翻訳することをいいます。

誰に向けての文書?

契約書は、当事者が売買契約などの契約を結ぶ際に作成します。
たとえば、土地売買契約書の中には、当事者が合意した事項、

目的物はどこの土地で
いつまでに代金を支払い
いつ土地を引き渡すのか
地中に埋蔵物があった場合どうするのか
代金の引き渡しが期日までにない場合どうするのか

などなどの事項が記載されています。

リーガル翻訳は誰に向けられた文書?

では、契約書は、誰に向けられた文書なのでしょうか?
教養書などは一般の方々向けの本ですから、一般の方々がわかるように翻訳をしないといけません。
このように翻訳においては読者が誰なのか?が極めて重要なのです。
ということで、契約書ですが、契約書は当事者が作成するので当事者に向けて書かれているのは間違いありません。
ですが、当事者間で、ある条項について解釈が違って当事者の話し合いでは解決しない場合も出てきます。
その際は、最終的には裁判所に判断してもらいます。
裁判所は、当事者が作成した契約書に基づき争いを解決していきますから契約書は最終的には裁判所に向けられた文書なのです。

契約当事者vs裁判所

契約書が最終的には裁判所に向けられた文書だとすると、契約書の翻訳の際気をつけるべきは、裁判所に伝わる翻訳になっているか、ということです。
法的に正確に用語を使っているかが大切になってきます。
ですが、そうなると法律の専門知識のない方々にはわかりにくい文となるのは間違いありません。
そういう意味でリーガル文書ではわかりやすさと正確性を両立させることは困難なのです。
わかりやすさと正確性が二律背反となるのがリーガル文書の特徴です。
契約書が裁判所に向けられた文書だとすると、わかりやすさを犠牲にしてでも正確な翻訳を!ということになります。

一般文書では、否定の否定=肯定でも良いかもしれませんが、
リーガル文書では、「否定の否定」=「否定の否定」で翻訳します。

論理学でいう「逆」も「裏」も真ではないので、「逆」や「裏」で翻訳はしません。

13歳未満は対象者ではありません、という英文があった場合に、13歳以上が対象者です、とは翻訳しません。
13歳未満が対象者じゃないからといって、13歳以上が対象者であるとはいえないからです。

論理的な厳密性

論理的な厳密性をもって翻訳をする必要があります。
法律用語を知っていればリーガル文書の翻訳が可能というわけではないのです。
法律の基礎にある論理的な思考に敏感でなければリーガル翻訳は難しいと思います。

---次話へ続く---



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1 件のコメント

  1. ピンバック: リーガル翻訳 - 強調としてのno money<リーガル翻訳編>No, Not

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