Google検索の落とし穴<誤訳編>2

あってはならない誤訳

誤訳の原因はいろいろあります。誤訳の例としては、「日本語としてはスムーズなのですが…<誤訳編>1」の閲覧をお願いします。

1 専門外の分野だった
2 文法力不足
3 読解力不足
4 Google検索に頼りすぎる

思いつくだけでもこれだけあります。
1、2と3は問題外の原因です。
ここで取り上げたいのは4です。

Google検索の落とし穴

翻訳者はGoogle検索等の検索エンジンをフル活用して翻訳をします。
検索ワードを入れると関連する情報の数が何万件、何10万件、何100万件、何1,000万件と表示されます。
自分の訳がどれだけGoogle検索で表示されるかを正しい訳の指標として用いる方も結構います。
ここにGoogle検索の落とし穴があります。
このやり方では誤訳の再生産につながることがあるのです。

赤信号は進め?

たとえば、信号機の意味を全く知らない人がいたとします。江戸時代からタイムスリップしてきた太郎さんを想像しましょう。
太郎さんは初めて信号機を見ました。信号機には青・黄・赤があります。
太郎さんは赤信号で通過する自動車を何台も見ました。
そこで太郎さんは考えました。
「”赤色”は進めという意味だ!」

残念ながら間違いですね。
交通法規上、赤信号は止まれ、という意味ですから。

太郎はなぜ間違えた?

なぜ太郎さんは間違えたのでしょうか?
それは、決まり事(規範・規則)と事実とを混同したからです。
決まり事としては、「赤信号は止まれ」です。赤信号であれば止まる”べき”です
しかし、その決まり事を守らない人、つまり違反者がいるのも事実です。
いくら違反者が多くてもそこから赤信号が進めになることはありません。事実と規範は別だからです。
つまり、赤信号で進んでいる自動車がある、という事実をどれだけの数確認しても、その事実から赤信号は進めという意味だという決まりは導かれないのです。
事実がどうであれ、決まりは決まりとして既に決まっているのです。「赤信号は止まれ」という決まりに照らして赤信号を進んでいる自動車を取り締まらないといけないわけです。

翻訳でも同様

翻訳でも事情は同じです。
言語は決まり事です。人によって言語の使用(言語規則)が異なるようでは他者との会話は成り立ちません。言語規則が異なれば、旧約聖書の創世記に記載のある(旧約聖書—創世記11章—)、「バベルの塔」を作ろうとして神に言葉を混乱させられた人々のようになってしまいます。
そうであれば、Google検索で出てくる訳文の数が多いからといってそのことから直ちに正しい訳だ、と判断することは論理的には間違いです(もちろん、正しいこともありますが、その理由は多くの人がその訳文を用いているから、という点にはありません)。
原文の言語規則、訳文の言語規則に加えて、専門分野の規則を熟知した上で、適切な訳文を作り上げるのがプロの翻訳者の仕事です。

---終---

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