第一に正確であること
翻訳、特にリーガル翻訳においては、何をおいても「正確性」が第一です。
(正確性については、過去記事
・「裏は必ずしも真ならず<正確性編>1」
・「揚げ足を取られないように!<正確性 翻訳とは?>搭乗拒否」
もご覧いただければと思います。)
契約書などのリーガル文書は、裁判所で紛争解決基準として用いられるからです。
今回は、「超」「未満」「以上」「以下」を解説します。
超
英語では、[over]になります。
「超」は、
「物の上を過ぎて行く」(広辞苑第7版)こと
をいい、たとえば、
国境を超える
という表現があります。
「超える」とは、過ぎて行くということですから、「国境を超える」は、国境線を過ぎて行くことを意味します。
つまり、「国境を超える」とは、国境線上にいることは含みません。国境線上にいる限り、国境を越えたことにはなりません。
たとえば、
本日の気温は30度を超えました。
という表現だと、30度を過ぎているわけですから、30度自体は含みません。
未満
英語では、[under]になります。
「未満」は、
その数に達しないこと(広辞苑第7版)
をいい、たとえば、
100円未満は切捨て
という表現があります。
未満とは、その数に達しないことですから、「100円未満は切捨て」は、100円に達していない金額は切捨てるということです。99円は切捨てですが、100円になると切り捨てません。
つまり、100円未満は、100円を含みません。
以上
英語では、[~ or more]になります。たとえば、[7 or more]で、7以上となります。
「以上」は、
(法律・数学などでは、)基準の数量を含みそれより上(広辞苑第7版)
をいいます。
たとえば、
18歳以上
だと、18歳を含んでそれより上となります。
[7 or more] では、7とそれより多く、ということですから、「7以上」となります。
以下
英語では、[~ or less]になります。たとえば、[7 or less]で、7以下となります。
「以下」は、
(法律・数学などでは、)基準の数量を含みそれより下(広辞苑第7版)
をいいます。
たとえば、
1万円以下
であれば1万円を含んでそれよりも下、ということです。
[7 or less] は、7とそれより少なく、ということですから「7以下」となります。
具体例
たとえば、次の文があるとします。
100万円超は税率が10%
100万円未満は税率が5%
この例文だと、100万円ちょうどは税率何%なの?という疑問が生じます。
なぜなら、「100万円超」は、100万円ちょうどを含みませんし、「100万円未満」もまた100万円ちょうどを含まないからです。
100万円ちょうどの税率は8%だ、というのでしたら全然問題はありませんが、もし、100万円ちょうどの税率が10%、といいたいのでしたら、上の例は、100万円以上は税率が10%と直さなければなりません。
逆に、100万円ちょうどの税率が5%、といいたいのでしたら、上の例は、100万円以下は税率が5%と直さなければなりません。
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日常生活で「超」「未満」「以上」「以下」の違いにこだわる場面というのはそんなにないかもしれませんが、リーガル文書では、その数字を含むのかどうかが大問題となることがある(上の税率の例など)ので、正確に言葉を選ばないといけません。
翻訳においても、
[under 7](7未満)
なのか、
[7 or less](7以下)
なのかを正確に訳しなければなりません。
細かいようにみますが、たとえば、含む含まないの分岐点になる単語や表現には細心の注意を払うことがリーガル翻訳では特に求められます。
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