契約上の義務を表す[shall]と[will]

契約書では、必ず義務規定が存在します。
日本語では、「~するものとする。」という表現が契約上の義務を表す表現です。
英文契約書の中で、「~するものとする。」に対応する単語は、
[shall]
[will]
の2つがあります(他にもありますが、今はこの2つを取り上げます)。
この2つのうちでも、より広く用いられているのは、
[shall]
です。
[shall]が法的義務を表すことに争いはありません。
また、
[will]も法的義務を表します。
ただ、[will]は、立場の強い側が自分の側の義務を規定する場面で好んで用いられるようです(山本孝夫『英文契約書の読み方』(日本経済新聞社、2006年)78頁)。
相手側の義務を規定する場合は[shall]を用い、立場の強い側が自分の側の義務を規定する場合は[will]を用いることから[shall]と[will]の違いが問題となります。
違いを聞いても、立場の強い側の弁護士は、「同じ」と返答するので、では、[shall]と[will]を入替えてみようと言うと、なぜか次のドラフト(草案)では[will]は消えて全て[shall]と規定されているということがあるとのことです。
法的には[shall]も[will]も同じ法的義務を表す単語だとしても、当事者としては義務の程度に差があると認識している(その認識が裁判所で認められるかは別問題ですが)ことの一証左だと思います。


さて、[shall]と[will]では、その語義にどういった違いがあるのでしょうか?
[shall]は、「負うている」「…ねばならぬ」がその語義です(寺澤芳雄 編集主幹『英語語源辞典』(研究社、1997年))。外部から強制されるニュアンスがあり、まさに義務を表す単語です。
これに対して、
[will]は、「欲する」「望む」「欲望」で、人の内心にある欲望・意志を表す単語です。外部からの強制というニュアンスはありません。
この違い(外部からの強制のニュアンスの有無)が、契約当事者の認識に影響しているのでしょう。


[shall]と[will]が英文契約書中に混在する場合、何故[will]を用いているのかは確認した方が良いと思います。
そして、可能であれば、全て[shall]で統一した方が良いと思います。


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