初めに正確性ありき
リーガル翻訳においては、何をおいても「正確性」が第一です。
(正確性については、過去記事
・含むのか、含まないのか<正確性編>超、未満、以上、以下
・裏は必ずしも真ならず<正確性編>1
・揚げ足を取られないように!<正確性 翻訳とは?>搭乗拒否
もご覧いただければと思います。)
契約書などのリーガル文書は、裁判所で紛争解決基準として用いられるからです。
今回は、「及び」「並びに」を取り上げます。
共通点
「及び」も「並びに」も、ともに複数の語句を並列する場合に用いる法令用語です。
A、B、及びC
A及びB並びにC
などとして用いられます。
相違点
並列のレベルが複数ある場合に、一番小さな段階に1回だけ「及び」を用い、あとは、すべて「並びに」となる点で、「及び」と「並びに」は異なります。
つまり、一番階層が低い並列関係に「及び」を用いて、あとは「並びに」となるわけです。
こう言ってもわかりにくいと思いますので、具体例を用いて説明したいと思います。
具体例
マグロ、ニワトリ、犬を例にして「及び」と「並びに」を用いてみます。
犬及びニワトリ並びにマグロ
があるとした場合、まず、大きく犬・ニワトリのグループとマグロが並列となります。
犬・ニワトリvsマグロ
ですね。
そして、犬とニワトリが並列となります。
図示するとこうなります。
また、
犬並びにニワトリ及びマグロ
という関係も成り立ちます。
犬VSニワトリ・マグロ
ですね。これを図示すると、
となります。
分け方が違ってきていますが、なぜでしょうか?
分類の基準
の違いは、分類基準の違いにあります。
分類1では、たとえば、人間の生活圏の近くで生息している生き物か(ニワトリと犬)そうではないか(マグロ)で分けています。
分類2では、たとえば、食用生物か(ニワトリとマグロ)そうではないか(犬)で分けています。
要するに、分類基準次第で「及び」「並びに」が置かれる場所が変わります。
ですので、「及び」「並びに」を正確に使うためには、分類基準を正確に理解していることが必要となります。リーガル分野では、その基準が法的な専門知識と連動してきますので、リーガル翻訳においては法的な専門知識が不可欠となります。
日常用語としては…
日常、「及び」「並びに」は使わないと思います。「や」「と」などが用いられるでしょう。
また、たとえ、「及び」「並びに」が用いられるとしても、語感で使い分けていることも多いかと思います。
ですが、法令用語としての「及び」「並びに」は、上のように、厳密に使い分けがなされていますので、語感で「及び」「並びに」を用いるわけにはいきません。気をつけなければなりません。
リーガルの英日翻訳では、原文(英語)では、「及び」も「並びに」もすべて[and]ですから、この[and]が「及び」なのか「並びに」なのかは翻訳者が判断する必要があります。[and]という一語ですが、意外に難しいのです。
---シリーズ続---
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